2004-2



和歌山県内捕獲の個体調査によりアライグマから外来寄生虫確認。
在来野生動物の脅威に!
【2004年10月21日付掲載記事】
 和歌山県田辺市など県内9市町村内で有害駆除されたアライグマから、日本国内で初確認となる外来寄生虫2種類が見つかった。
2003年5月から今年7月までに捕獲された計313匹の消化管を調べ、計17種類の寄生虫を確認した。国内で初確認だったのはアライグマ糞線虫(ストロンギロイデス・プロキオニス)と、北米の野生肉食獣に多く見られるラーラ胃虫(フィサロプテラ・ラーラ)の2種類。アライグマ糞線虫は、今年5月から7月までの計72匹で調査し、18%にあたる13匹から検出された。体長3ミリ弱、幅0・03ミリ前後と非常に小さいため、1年目の寄生虫調査では確認されていなかった。今年の調査で初めて確認されたが、実際の感染率はもっと高いとみている。犬にも腸管寄生し少なくとも3カ月半は感染が続いたとの報告もある。日本国内の飼い犬はもとより、タヌキやイタチ、キツネ、テンなどの在来野生動物に感染する危険性が考えられるという。
ラーラ胃虫は241匹中11匹が感染していた。体長2〜4ミリ、幅1ミリ。北米大陸限定種で、人への感染報告はないものの、原産地ではアライグマをはじめ、コヨーテで高い感染率を示し、在来野生動物への感染の可能性があるという。


詳しくはhttp://www.agara.co.jp/DAILY/20041021/20041021_001.htmlまで。


第6回岐阜大シンポ報告

 

 2004年6月11〜12日、岐阜大学で「岐阜大学21世紀COEプログラム」、「野生動物の生態と病態からみた環境評価」が開催された。2日間で、研究者、学生、愛護家、行政など約400名が参加し、活発な意見交換がなされ盛会であった。

 里木岐阜大学長は、スライドや鳥の声を聞かせたりして、野生動物の感染症や保護を含めて、環境評価の重要性を述べた。

 

@野生動物の感染症

 今年話題の高病原性トリインフルエンザは、日本への侵入ルートは不明であるが野鳥が運んだと考えられるので、早期に発見し限局時の初期対応を行い抑え込むことが重要である。東南アジアや中国では、豚や鶏と人が同居するようなケースもあり、そこでウィルスの変異が起こりやすいので心配である。アメリカも、東南アジアからの移民が鶏等の生体販売しているので、問題となる。

 エキノコックスは、野生動物間の感染状況の正確な把握、感染源の低減や除去技術の確立ができ普及が望まれる。国は決断時期である。

 希少種の保菌状況は、大腸菌、サルモネラ菌や腸球菌などが、地域性があるが高率に検出されている。薬剤耐性菌の試験も実施されている。

 は虫類のサルモネラ菌保菌状況は、日本ではヘビ類71%、カメ類60%、トカゲ類5%である。ベトナムではヘビ類61%、カメ類60%、トカゲ類35%であった。これらの数値は環境からの影響を受けている可能性が高い。

 

A野生動物の生理、生態

 佐渡ではトキの人工孵化育雛が成功し、野生復帰の準備をはじめだしている。それには@餌場の確保、Aテンや帰化種の駆除、B環境保全型農業などが必要である。トキはクチバシの先端まで神経血管が走行しているので、容易に餌を取れる水田が必要となり、これらの確保が重要である。

 クマ類の場合、ツキノワグマの栄養状態(血中ヘモグロビンと尿素体窒素濃度)をみると、状態の悪い夏にスギやヒノキの樹皮剥ぎが多かった。この環境の悪化が人間との軋轢を増大させ、個体群の衰退を招く。

 猛禽類の場合、内分泌撹乱物質が個体数減少の一因と考えられている。

 エゾシカの場合、農業被害が年間30億円あり、問題化している。生理評価として、精巣での性ステロイドホルモンの合成と精子発生は正常であり、現時点での環境汚染の影響は認めなかった。

 鳥マラリアからみた地球環境評価は、鳥マラリアが人マラリアに先行して拡大すると云われている。現在日本産鳥類で17%が血液原虫に感染し、沖縄では44%に達している。ライチョウ、南西諸島のカラスバトでも検出された。保全医学的研究が、地球環境と希少種の保全役立つと思う。

 

B野生動物から見た環境評価

 水鳥の鉛中毒症と環境評価

 白鳥を中心に水鳥の鉛中毒がみられる。その対策には、散弾を鉛から軟鉄やビスマス、スズ等の代替品に替える事が最善といえるが、全国での実施にはまだ議論が必要。中毒例の8割は北海道からの報告である。鉛中毒となると下痢、貧血、腺胃拡大、肝や腎の封入体形成等が認められ衰弱死する。

 カラスにおけるダイオキシン類の蓄積と甲状腺病変

 東京のカラスを中心にダイオキシンの蓄積が認められる。カラスはダイオキシン類が、クマタカの2倍、アオサギの4倍蓄積している。

 甲状腺の変化は、ろ胞の拡大、過形成、腫瘍と変化する。昨年よりディーゼル車の制限され、その影響の調査が今度の課題である。

 カワウの甲状腺の変化

 東京のカワウは琵琶湖のカワウより甲状腺の病変が著名である。カワウは日本の野生鳥類で有機塩素蓄積濃度が一番高い。このため性腺の異常や繁殖率の低下が認められる。WRVも各大学はじめ他機関への協力や共同研究ができないものか。

 このように多様な報告が鳥取大、北大、帯畜、岩大、農工大そして岐阜大からなされた。鳥取、北大を除いた4校は、岐阜大学大学院連合獣医学研究科であり、文部科学省や環境省の委託費を持っている。CEOプログラムは、科学的に野生動物を捉え、人と野生動物が共に健康に生きてゆくための対策提言を行っている。今後COEの成果に期待しましょう。

 

WRV 須田沖夫



WRV共催東京支部学術講習会および懇親会を開催

日時:平成16829日(日)午後1時〜530

場所:ホテルローズガーデン新宿 地下鉄丸の内線「西新宿」駅前

   東京都新宿区西新宿8-1-3 TEL03-3360-1533

 

講演:午後1時〜330分 

演題:野鳥の臨床

   ―40年に亘る実践体験と特に海外での救護法の研究および

コハク鳥の翼の複雑骨折治療から放鳥成功まで―

講師:河内獣医科院長、島根県傷病野生鳥獣救護ドクター

WRV会員 河内 咲夫 先生

 

懇親会:午後4時〜530