☆フェンチオンに関する活動　〜ﾒｰﾘﾝｸﾞﾘｽﾄ・ﾎｰﾑﾍﾟｰｼﾞより抜粋〜

北海道のタンチョウは現在約1,000羽を数えますが、人との距離が近くなった事もあり、様々な人為的原因で死亡する個体も少なくありません。最近新たに死因のひとつとして判明したのが、有機リン系殺虫剤フェンチオン（ＭＰＰ）です。2001年から2003年に、フェンチオン中毒死と推定される死体が４件見つかっています。
　フェンチオンは鳥類に対する毒性がとても強く、欧米では規制が進んでいます。しかし日本では、さまざまな場所で普通に使用され、なんとアフリカでは“殺鳥剤”としても使われているそうです。（渡辺ユキ）

　　　　　　　　　　　

殺虫剤フェンチオン（MPP）と鳥類への影響
　　　　　　　　　及び　ウエストナイル熱媒介蚊対策ガイドライン　


WRV幹事　　黒沢信道・渡辺ユキ

会員の皆さまへ

　有機リン系殺虫剤のフェンチオンは、鳥類に対する毒性が非常に高いことがわかっています。野生のタンチョウでは、2001年から2003年に回収された死体のうち７体について調べたところ、4体からフェンチオンが検出されました。これらはいずれもフェンチオンによる急性中毒死と考えられ、このことから中毒被害がまれではなく出ている可能性が懸念されています。この他に本州では、ツバメ、カラス、ドバト等の集団中毒死例があります。また、海外では多種の鳥類で多数の被害例が報告されており、小鳥類はもとより、シギ・チドリなどの渡り鳥や猛禽での被害例も多く報告されています。

フェンチオンは1960年代からある古い薬剤です。有機リンとして人への毒性自体も高く分類されている上に、鳥類や水生生物に与える影響の大きさから、米国やＥＵではすでに使用を中止しました。しかし日本国内では、米や豆類を始めとした作物への農薬や、家庭用殺虫剤としてまだ一般に広く使用されていて、鳥類と生態系保全にとって危険が大きい薬剤であるにも関わらず、そのことがあまり知られていません。また、製品の説明書きにも鳥の毒性についての記載がありません。
　こういった中で、2003年に厚労省から自治体に配布された「ウエストナイルウイルス熱媒介蚊対策に関するガイドライン」では、蚊の防除のための殺虫剤としてフェンチオン製品が多数載っています。これに従えば、ウエストナイル熱発生とともにフェンチオンが散布されることになり、野鳥が被害を受け生態系に影響が出る可能性があります。ウエストナイルの国内発生の可能性は現実的になっています。そこで毒性の情報を提供し、緊急に対策を考えてもらう必要を感じた個人が、関係省庁（環境省、厚生労働省）に提案文書を提出しました。WRVでも直ぐにこれに賛同を表明しています。

　このことは様々な方面の関心を呼び、今期国会の環境委員会でも取り上げられています。そこでWRVでは皆様にも提案文書の内容をお伝えする事にしました。フェンチオンと鳥類への毒性に関連するウエブサイトもお知らせします。さらに知りたい方はそれらをご覧下さい。

　この報告が、会員の皆様がフェンチオンについて知り、鳥類の被害を防ぐため今できることは何かについて考えるきっかけになれば幸いです。